神様におすがりしながら


●先生のおはなし
「神様におすがりしながら」

金光教三木みき教会
片島かたしま 斎弘まさひろ 先生


 私がご奉仕させていただいている教会に、30代の男性がお参りになられました。
 その方は、ずっとうつむいたまま、教会の玄関先に立っていました。そして、私に、「話を聴いてくれますか?」と尋ねられました。私は、「はい。ここは誰がお参りしてもいいので、どうぞ」と、教会に入ってもらいました。そして、私はこの人のお役に立てますようにと、神様にお願いしながら話を聴かせてもらいました。
 その方は私に、「何もする気力がない。仕事はしたくない。お風呂も入りたくない。こんな自分なんか生きる価値はない。こんな自分は神様に見放されている。死にたいけれど死ぬ勇気がない。過去に戻ってやり直したい」と心の内を話して下さいました。
 続けて、「私はいつも、自分はありがたい環境だということが分からず行動してしまい、後悔することが多いのです。ちょうど5年前、仕事を探しにハローワークに行きました。しかし何も決まらず、帰ろうと外に出た時に、車から降りてきた方に声を掛けられました。その方は、『私の所で就職しないか?』と言ってきました。そして、内容を詳しく聞かせてもらい、あっという間に仕事が決まりました。しかし、たった3カ月で辞めてしまったのです。
 私には、両親が亡くなっていません。今思えば、こんなにスムーズに決まったのは、両親が私に与えてくれた就職先に思えるのです。また、その職場、仕事内容は、私にとって、いい環境でした。親にも申し訳ありません。だから、過去に戻りたいのです。ずっとそのことを考えて後悔ばかりしています」と話されました。
 私はその方に、「よく参拝して下さいました。信心すれば絶対助かります。ご両親はあなたのことを絶対見放したりせず、今でも絶対応援して下さっていると思いますよ。あなたは、今までの人生の悪いことばかりを見ているのではないですか。その過去の中にも良いことはあったはずです。得たものもあったはずです。そこに目を向ければ、悪い過去は良い過去になりますよ」と、助かって欲しいという気持ちで言わせてもらいました。
 しかし、その方の心には全く私の言葉は響きませんでした。その時ふと、「この方はアドバイスが欲しいのではない。ただただ、自分の話を受け止めて欲しいんだ。だから響かないんだ」と思わされました。そこで改めて、「あなたが助かるためのお願いは何でしょうか。私はあなたの願いに沿って神様にお願いさせて頂きます」と言うと、この方は、「それは過去に戻ることです」と前と同じことを言われました。
 私は内心、「それは無理だろう」と思ってしまいましたが、その方に、「分かりました。その通り、神様にお願いさせていただきます」と言ってお祈りをさせていただきました。お祈りを始める前にその方に、「正直、どうやってご祈念したら過去に戻れるか分かりません。自分には一生懸命時間を掛けて神様におすがりするしか出来ません。ですので、長くなるかもしれません。苦痛でしたら、帰っても構いません」と言わせてもらいました。私は、「結果がどうであれ、この方の願いに沿ってお願いしていく。この方自身を助けるのは自分がすることじゃない。神様どうぞ、この方が助かりますように。どんな形でもいいですので、過去に戻ることが出来ますようにお願い申し上げます」というように、ひたすら神様にすがりお祈りさせてもらいました。
 結果、過去には戻れませんでした。しかし、その方は、「僕のお願いをここまで真剣に聴いてくれて、ここまで祈ってくれた人は初めてです。ある人からは、『過去になんか戻れるわけがない。何を甘いこと言ってるんや』と言って真っ向から否定されました。しかし、あなたは、分かるはずのない、私の気持ちを分かろうとして下さいました。ありがとうございました」と言って帰られました。その言葉を聞いて、どんなお願いでもその方の心に寄り添って、神様にお願いさせていただくことの大切さを教えられました。
 それからその方は、毎日お参りされるようになりました。その都度色んな話を聴かせて頂き、一緒に神様におすがりさせて頂きました。
 それから1カ月が過ぎたころ、その方が、生き生きした顔でお参りされ、こう言われました。「実は昨日、過去に体験したような感情になれました。というのも、ある方から就職の話を頂いたのです。しかも、決まりそうです。このスムーズに就職が決まりそうな状況は、5年前の就職が決まった時と似ていました。その時、『あぁ、神様、過去に戻してくれたんだ』と思いました。でも幸せには感じませんでした。過去に戻れたら幸せになれると思っていましたが、勘違いだったのかもしれません。今現在が大事なのかもしれません」と言われました。
 そして、この日を境に、その方は、出来なかったお風呂に入ることや、掃除、洗濯が出来るようになり、働くという気力も生まれ、就職することも出来ていきました。その時この方は、「神様は何も出来なかった私、失敗を犯した私でも見放さないんですね」と涙を流して語って下さいました。
 そして今、元気にお仕事を続けておられます。
 金光教の教祖様のみ教えに、「神様は親、人間は子、親子の情はどこまでも変わるものではないぞ。親神様は人間氏子がかわゆうてなられぬのぞ」とあります。
 ここからも神様におすがりしながら、お役に立つ人にならせていただけるよう信心を進めてまいりたいと思います。

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