戦後70年を迎えて


●金光教教務総長・年頭放送
「戦後70年を迎えて」

金光教教務総長きょうむそうちょう
岡成敏正おかなりとしまさ 先生


 皆様、あけましておめでとうございます。共々に今日の命を頂いて、平成27年の新春をお迎え出来ましたことを、心よりお慶び申し上げます。
 本年は、第2次世界大戦が終結して70年を迎えます。日本はすでに戦後生まれの人が8割になったと聞いておりますが、終戦までの日本は、明治の後半から、およそ10年ごとに戦争を繰り返してきました。そのような国が、戦争をしない国としての歩みを進め、大きな経済発展を遂げ、世界各地への支援、貢献が出来るまでにならせて頂いております。
 それは、先人たちが、着る物も、食べる物も、住まいもままならない中で、戦争による計り知れない犠牲への反省を土台にして平和を祈り、努力されてきたたまものであります。そう思いますと、今に生きる者として、そのご苦労に敬意と感謝を持たずにはいられません。
 そのような豊かさや便利さ、快適さという恩恵を受け続けている一方で、社会はいつしか、人間中心、経済中心ということが当たり前になっているようにも思います。青少年を取り巻く痛ましい事件や、高齢者をねらった悪質な犯罪、中高年の自死や無縁社会と言われる現実を見るたびに、私たち人間は、何か大切なものを見失ってはいないだろうかと思わせられます。改めて、私たちに恵みを与えて下さる天地自然への畏敬の念や、人と人とが助け合って生きるという関係が築かれていくことを大切にしていきたいと思うのです。
 さらに、世界に目を向けますと、地球規模の環境破壊が進み、富める者が弱い立場にある人々を支配し、様々な格差や人命が軽視される状況を生み出しています。また、国家や民族間で利害や思想が対立し、万物の霊長と言われる人間同士が傷つけ合い、命を奪い合うことが、今も繰り返されています。
 そのような、現実に心が痛むのは私だけではないと思います。私は、それぞれの人や国同士が助かり立ち行く平和な世界が開かれていくことを日々祈らせて頂きながら、私自身が平和を築く確かな一人にならせて頂きたいと願わずにいられません。
 そのような思いがありますから、周囲の人との触れ合いを大切にしておられる方々を見ると、ありがたい気持ちになります。また、困っている人に自分から声を掛けて助けようとされる姿や、困難に出遭った時に、励まし合い、力を合わせて乗り越えようとされる方々の姿に触れますと、言い知れぬ感動を覚えるのであります。
 そして、そうした人間が人間らしく生きていくための原点は、やはり、家庭だと思わせられるのであります。
 金光教の教祖金光大神様の教えの中に、次のようなお話があります。

 「ある人が子供の数が多く、それぞれ性格が違うので困っているとお願いした。金光様はその人に、『五本の指が、もし、みな同じ長さでそろっていては、物をつかむことができない。長いのや短いのがあるので、物がつかめる。それぞれ性格が違うので、お役に立てるのである』と教えられた」

 このお話は、「子どもが多く、それぞれの性格が違うから困る」と思っている親御さんに対して、子どもさんたちを5本の指に例えて、「一人ひとりの性格が違うからこそお役に立てるのだ」と、むしろ喜ばしいことだと教えられているのです。
 子どもが、自分のお父さんやお母さんから、人との違いを指摘されて叱られるばかりでは生きづらくなります。反対に、「あなたは、お兄ちゃんやお姉ちゃんとは違うものを持っている。だから、あなたにしか出来ないようなお役に立つことがあるよ」と言われれば、自分も認められているのだという気持ちになり、それが、生きる力ともなります。そういう触れ合いは、人間の可能性を伸ばす力となり、世のお役に立つ元にもなると思います。さらに、人を大切にしていく心を育てます。これは、夫婦の関係作りから始まることでもあると思います。
 ですから、このお話は、人が人として生きる上で大切なことを教えられているのだと思えてなりません。つまり、「違いがあるからこそお役に立てる」という見方は、人と人、人と万物の関係を生かすだけでなく、国と国との平和な関係作りにも通じるものだと思います。
 誰もが、誰かのお役に立つ力を与えられています。人に喜ばれると、いのちが輝きます。それは、人間は皆、天地の恩恵によって生かされ、人間を始め万物を生かし、育くもうとする天地の親神様の心を頂き続けているからであります。
 そのことを金光大神様は、人は皆「神のいとし子」と教えられました。人は皆「神の子」だからこそ、誰もが天地のような心になることが出来るし、その心を育むことによって助かり立ち行く世界が開かれてくる、とお示し下さったのです。
 金光教の前の教主・金光鑑太郎かがみたろう様は、次のお歌をお詠みになりました。
 
 「世話になるすべてに礼をいふこころ平和生み出すこころといはん」
 「世話になるすべてに礼をいふこころ平和生み出すこころといはん」

 人を傷つけ合うのも人間の心からであれば、生きる知恵を出し合い、平和に生きることが出来るのも人間の心からです。一つ一つの家庭が平和な生き方を育んでいけば、その一人ひとりが世界の平和につながる尊い存在となります。どうか、お互いが「神の子」として生きることに心を込めていく、すなわち、人間同士が天地のような大きな心を育てる一年となりますことを、心より祈っております。

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