元日の心


●金光教教務総長・年頭放送
「元日の心」

金光教教務総長きょうむそうちょう
西川良典にしかわよしのり 先生


 皆様、新年明けましておめでとうございます。共々に新しい年を迎えることが出来ましたことをありがたいことに存じます。新たな年を迎えますと、すがすがしく真新しい心地がしてまいります。また、旧年中の起こってきた様々なことを思いながら、今年はどのような年になるのかとあれやこれや思いを巡らせたりもします。
 金光教の教えに、「信心は日々の改まりが第一じゃ。毎日、元日の心で暮らし、日が暮れたら大晦日と思い、夜が明けたら元日と思うて、日々うれしゅう暮らせば、家内に不和はない」とあります。
 「信心は日々の改まりが第一」とありますが、これは何も信心をするものだけの教えではなく、私たち全ての人の暮らしにも当てはまることのように思えます。例えば夫婦の間でのことや、親子の間でのこと、会社や学校での人間関係などに置き換えてみても良いと思います。私たち人間は問題が起こってきますと、どうしても心が乱れて自己中心的な方向に向かってしまいます。この「改まり」とは、自分自身の行動や言動を見つめ直し、心から反省することから生まれてきます。そこから、お世話になっている人や物に対して感謝の心を持って接していく心が生まれてくるのだと思います。皆がそのような心持ちになり、日々取り組むことで不和がなくなっていき、一日一日が大切に過ごせるようになっていくのだと思えるのです。
 ある教会にお参りになる女性のお話を紹介してみます。その方のご主人は、ある製薬会社の営業部にお勤めになっています。数年前のことですが、自分の担当するエリアで、売り上げが次第次第に落ちていき、その結果、上司との人間関係がうまくいかなくなったのです。初めのうちは、会社へ行くのに腰が重いという感じだったそうですが、ついにはいっそのこと会社を辞めたい、と漏らすまでになり、気持ちが追いつめられていったというのです。
 そういう状況ですから、ご主人の目覚めはたいへん悪い。やっと目が覚めても、体が釈然としないのか、30分近く時間を掛けないと、起き上がれないというのです。起きることが出来ても、会社に行こうという意欲がわいてこない。ですから、起きたがらないご主人に奥さんのイライラは募り、毎朝けんかばかりしているのだそうです。
 そんなご主人の姿を毎日見ていて、奥さんは、「主人に対して、私の出来ることは、一体何であろうか」という発想に立たれました。その時、以前教会の先生から、『目が覚めたら、夜休ませてもらったお布団を丁寧に畳んで、お礼を申しなさい』と言われたことを思い出されたのです。それまで、教えは聞いて知っていたれども、どこまで本気で、お世話になったお布団にお礼が言えていた自分であろうか、と反省をなさいました。
 奥さんは、「私が主人に成り代わって、お世話になったお布団にお礼を言わせて頂こう」と思い立ち、ご主人の分、自分の分と2人分、お布団にお礼をなさるようになりました。
 そのことが何カ月続いたんでしょうか。次第に、ご主人の目覚めが良くなり、自分で起きられるようになったのです。気持ちが充実し、仕事に対する意欲が以前にも増して出て来ました。今ではご主人は、奥さんよりも早く起き、洗面を済ませ、気軽に音楽を楽しみながら読書をし、それから食事をして会社へ行っておられるそうです。奥さんがおっしゃいます。「以前のように、会社に行きたくないというようなことを全く言わなくなりました。気力が充実し、あのころと同じ人間かと、見間違えるほどです」と、このように先日お話し下さいました。
 奥さん自身もそれまでは、何かと病気がちであったのが、いつしか心身共に健康なお体に回復されたとのことでした。
 その女性のお話を聞かせて頂きますと、神様のおかげを頂くには、人の立ち行きを願って、教えに沿って暮らしていくことが大切だということに気付かされます。そうした姿勢になれば、生活の中にはっきりとしたおかげが目に見える形で現れてくるのです。
 私たちは、人様には、お世話になれば、お礼を言いますが、衣食住一切には、お世話になっているにも関わらず、なかなかお礼が言えません。
 前の教主金光様は、「世話になるすべてに礼を言う心」とみ教え下さっています。天地のお恵みを頂いて生活出来ていることに気付き、そのことが「ありがたい」と思える心を大切にして欲しいと願われているのです。
 しかし、実際の生活の中では、何か問題が起こればすぐに不平不足の心が生まれてきて、「礼を言う心」どころではなくなってしまいます。そういう状況になっても、少しずつでも手元のところから「お礼を土台」とした感謝の生活になるように、繰り返し取り組んでいくことが、「日々の改まり」につながり、家庭内でも不和のない生活が生まれてくるのだと思います。
 私自身が、この「信心は日々の改まりが第一じゃ。毎日、元日の心で暮らし、日が暮れたら大晦日と思い、夜が明けたら元日と思うて、日々うれしゅう暮らせば、家内に不和はない」という教えを心に刻ませて頂けるようにと願わせてもらっています。
 どうぞ本年も、皆様方にとって、ここからの今、今日を大切にして、良い一年となられますように、祈りを込めて、新年のごあいさつといたします。

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