スナックの祈願祭



●私からのメッセージ
「スナックの祈願祭」

金光教麻布あざぶ教会
松本信吉まつもとしんきち 先生



 おはようございます。金光教麻布あざぶ教会の松本信吉まつもとしんきち54歳です。
 教会の近所に小さいスナックがありまして、カラオケを歌いながら、わいわいと楽しむお店なんですが、値段はリーズナブルだし、ママさんも気さくな人柄なので、地元の人たちが気軽にやってきます。で、私もそのうちの一人なんです。
 ママさんは信者さんではないんですが、そうしたご縁から、昨年の1月、店の商売繁盛をお願いするお祭りをしてほしいと依頼されました。常連のお客さんたち20人も一緒にお参りに来られまして、神様に、今までのことをお礼申し上げ、お店のますますの繁盛を祈願させてもらいました。
 ところがこの後、新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言、お店は休業せざるを得なくなった。その後は、感染防止に細心の注意を払って営業してこられたんですが、年末になって、なんと店主のママさんがコロナに感染してしまったんです。
 ママさんは、すぐにフェイスブックに書きました。
 「私は昨日発熱があり、本日病院で調べたところ、陽性反応が出ました。皆様には大変ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。保健所からの指示を待って、濃厚接触者に該当するお客様には個人的に連絡させていただきます」
 お客さんたちに、ありのままを正直に報告されたんですね。そして翌日、保健所から連絡を受けた直後には、「不安になられている方もいらっしゃると思うので、保健所から聞いた内容をご報告させていただきます。当店はカウンターにビニールシートがあり、マスクを着用しての接客のため、お客様は濃厚接触者には該当しないとのことでした」と、こう伝えたんだそうです。
 従業員や関係業者など、濃厚接触の可能性がある方にはすぐに検査してもらいましたが、結果はみんな陰性でした。ママさん自身は発熱や味覚障害、せきや頭痛などの症状がありましたが、幸いにも10日間の自宅療養で全快しました。ママさんは、「自分の体調もさることながら、お客様にご迷惑が掛からないようにと心配で、ただ祈るしかありませんでした」と仰っていました。
 感染のうわさが立って、たちまち廃業に追い込まれたお店もたくさんある中で、自分が感染したことを包み隠さず伝えて、お客さんが不安にならないように気を配った。これは大変勇気がいることだったと思いますねえ。どうしてそういうことができたんでしょうか。お正月には祈願祭を仕えて、神様にお願いしたじゃないか。お客さんも一緒にお願いしてくださった。神様はきっとお守りくださる。皆さんもきっと分かってくださる。そんな思いが、ママさんの背中を押したのかも知れません。
 こういう実直な姿勢が、神様のお心にかなったんでしょう。結果、お客さんの信用を損なうことなく、むしろお互いの信頼関係が一層深まって、この難局を乗り切っていけたんです。お客さんは少しずつ戻ってきました。営業利益は例年よりずっと少なくなりましたが、給付金や家賃の減免などもあって、何とかお店を続けられています。
 神様にお願いしたのに散々な年だったと、そんなふうに思ってもおかしくないでしょう。でもママさんは、神様のおかげで立ち行くことができたと思われたようで、「松本さん、また祈願祭をしてください」と申し出られましてね、2021年1月、今年も祈願祭をお仕えしました。
 さて、金光教が広まっていった明治の初期も、世界中にコレラの大流行があったんですね。国内でも、多くの人々が苦しんでいた。そんな中、大阪の地で信心を伝え、たくさんの人を救い助けたのが、後に大阪教会を開いた白神しらかみ新一郎しんいちろう先生という方でありました。
 もともと白神先生は、岡山で米問屋を営んでいたんですが、病気で目が見えなくなってしまいました。今一度、日の光を見たいと願って、様々な神仏にすがるんですが、なかなか良くならない。で、最後にたどり着いたのが、金光教の教祖のところだったんですね。何日も参拝を重ね、教祖からお話を諄々じゅんじゅんと聴かせてもらううちに、白神先生は、天地に満ちわたる神様のお働きを悟っていきました。そうして心のが開いていく過程で、ついに肉体のも開いていった。実際に目が見えるようになったんですね。この感激を、世の多くの人々にもお伝えしたい。白神先生は、居ても立ってもいられなくなって、コレラで多くの人々が苦しんでいる大阪にのぼったわけです。
 白神先生は、難儀を抱えている人々に「安心の道」を説いていきました。目の前の不安で心を苦しめるのはやめよう。神様はどんな時も私たちを慈しみ、恵みを授けてくださっている。そのことを深く悟るところから、立ち行く道が開かれるのだと教えたんです。
 あれから百数十年を経て、世界中がコロナ禍に苦しんでいます。私は今、「難儀をしている世の多くの人々に、どうか安心の道を授けてやってくれ」と神様から頼まれているような気がしてなりません。
 先ほどのお店のように、大変な中でも、神様のお働きを感じて、力強く生きている人たちがいます。
 私たちは、共に苦しみ、共に悩んでいますが、そんな時こそ、神様に心を向け、力を合わせて安心の道を歩もうではありませんか。
 今日もあなたにとって素晴らしい日になりますように。Have a nice day!

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