人の幸せのために



●信者さんのおはなし
「人の幸せのために」

金光教放送センター



(ナレ)佐藤功さとういさおさんは現在78歳。大会社で重役を務め、退職後は金光教と深い関わりのある、兵庫県の関西福祉大学の副学長に就任しました。
 佐藤さんは幼い頃、おばあさんに連れられて、大阪にある金光教玉水たまみず教会にお参りしていました。ある日、信者さん同士で集まる会がありました。そこでこんなことがあったそうです。

(佐藤)僕はあんまりそこに行くのは嫌やったんです。せやけども、行ったら、お菓子くれはるんですよ。それが楽しみでね。いつも嫌々やけど、おふくろに付いていってたんですよ。
 そしたらある時、大きなリンゴを頂いたんです。そこにいた皆さんは、リンゴをその場で切って食べていはったんですけれども、僕は食べんと置いてたんです。私は6人兄弟で、僕の下にあと5人兄弟がいてましてね。いつでもお菓子でも何でも取り合いですよね。だから、こんな大きなリンゴをもらっても、一人ではよう食べんのね。持って帰って皆に分けてあげようと思ったんね。すると、その委員長さんの奥さんが、「ぼく、何で食べへんの?」と言いはるから、「家帰ったら、兄弟待ってるんで、持って帰ります」と言いました。委員長さんは、「1つやったら足らんやろ」と、リンゴをもう1つくれはったんです。そうしたら、その横に座ってたお兄ちゃんが、「あんたええ目したな。あんた、手ぶらで来てお参りしたら、大きなリンゴ1つもらった。それだけやなしに、兄弟のことを願ったら、リンゴが2つになった。忘れたらあかんで。これがおかげやねん。信心しとったらこういうおかげがあんねん。よう覚えときや」と、その仲買人のお兄さんが教えてくれた。それで、その時に、「あっ、人のことを願ったら、神様はおかげをくれはんねやな」と思った。
 それからずっと考えが発展していくんですよね。だから、今でも、「自分のために一心になったってあかん。一心になるのは人のために、人を助けるために一心にならなあかん」と思っています。

(ナレ)そう語る佐藤さん。いつも人の幸せを願うことを大切にしています。
 以前の会社でアメリカに行き、ニューヨークで勤務していた時のことです。佐藤さんは、そこで金光教トロント教会の岸井先生と出会います。海外での生活の不安や心配事を相談したり、お祈りしてもらったりしていました。
 おかげで、海外での生活にも慣れ、順風満帆な毎日を送っていたのですが、そんな中で佐藤さんは髄膜腫ずいまくしゅという脳の病気にかかります。一度は取り除けたのですが、1年後に再発してしまいました。当然そのことは岸井先生に相談していました。 

(佐藤)これだけご祈念していただいて、自分でも一生懸命やったのに、何でまた再発するのか。神様は何を考えてるんやろうなと思った。
 それで、岸井先生に、「先生、あと5年だけ命を接いでもらうようにご祈念していただけませんか? 5年経ったら、下の子どもが大学を卒業する。大学を卒業するまではやっぱり親の責任やと思ってるから、いろんなことをしてあげれると思ってね」と言うと、えらい怒られてね。「佐藤さん、命をそんなふうに考えてはいけません」と、えらい怒られました。あの時はびっくりしました。岸井先生は優しいんやけど、その時だけは、「命を何と心得てるんですか。命は神様のものやから、どんなことがあっても文句は言ったらいけません。その神様にこうせえ、ああせえというお願いなんて私はできません」と怒られた。それで、「ああ、申し訳ございません」と謝った。「どうぞ命を取り次いでもろうて、良うなったら御用にお使いくださいますようにお願いしてください」と言うと、「分かった。それやったらご祈念してあげる」と言ってくれて、ご祈念してもらった。
 それで、2回目を手術して、今日も元気にやらせてもらってるんやけど、そんなことがありました。

(ナレ)佐藤さんはこの出来事をとおして、神様に生かされている自分だということに気付きました。そして、これからは頂いた命を大切にして、社会のお役に立たせていただきたいと願い直すのです。
 定年退職後、その思いは一層強まり、自分の経験した話を積極的に人に伝えたり、教会で発行されている新聞を配る時には、その人の幸せをお祈りしながら配ったりしています。
 そして4年前、佐藤さんのこれまでの実績や、いつでも人のお役に立つことを第一に考える人柄を知った、関西福祉大学の理事長から、副学長になってほしいと声が掛かりました。佐藤さんは「このために体を治してもらったのだ」とありがたく思い、引き受けました。
 「人の幸せを願うと、自分の事は神様が何とかしてくれる」と、佐藤さんは自信をもって話します。その言葉のとおり、副学長として、「大学がより良いものとなりますように」と願い、教職員一人一人に寄り添います。学生たちには、「大学を卒業した後も幸せに生きることができるように、勉学だけでなく、人としての生き方を学んでほしい」と願いを掛けています。
 佐藤さんは今日も、誰かのお役に立ちたいと、頂いた命をイキイキと輝かせ、大学へと足を運びます。

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