私にできることは



●信者さんのおはなし
「私にできることは」

金光教放送センター



(ナレ)神奈川県は三浦半島の葉山で暮らす髙井瑠美たかいるみさん42歳。髙井さんは、代々金光教を信心する家に生まれ育ちました。
 現在ボランティアで「グリーフケア」に取り組んでいます。グリーフケアとは、大切な人を亡くした悲しみ・苦しみといった悲嘆を抱えた方に寄り添い、立ち直ることができるようにサポートすることです。
 そのきっかけとなったのが、7年前の健康診断で髙井さんに子宮頸がんが見つかったことでした。その時、髙井さんは教会の先生から、「がんを願いの『がん』と受け止めて、神様の願いが何なのか見つけていこう」と諭されました。幸いにも初期のがんで一部を切除しただけで良くなったのですが、丁度同じ頃、親友のアコさんにも同じ子宮頸がんが見つかりました。

(髙井)彼女はステージ2のBでしたので、結構深刻だったんですよね。若いですし、色々相談されるんですけど、私は全く彼女の気持ちを、理解出来なかったというか、分かるんですけど、自分がそこを通ってないので、寄り添えなくて。

(ナレ)それでも、髙井さんは、少しでも力になりたいと思い、アコさんの話を一生懸命聞いて、自分が信心によって助けられた話をしました。また、参考になればと思って、九死に一生を得て助かった金光教の先生が書いた本を渡したのでした。ところが…。
 
(髙井)後日お母様から「こういう本は困ります」って言われたんですね。「この方は、こういうふうに受けることが出来たからいいけれども、そういうふうに受けれない娘のような子に、こういうのを見せられると余計落ち込んじゃうんです」
 お母さんはすごく優しくて、一緒にホームパーティとかよくやってくださって、本当に仲良くしてたお母さんに、そういってパシンとこられたのが、自分の中で頬をはつられたような、目が覚めたというかそういう感じがしました。

(ナレ)髙井さんは、これまでを振り返り、苦しんでいるアコさんを元気付けたいと思ってしてきたことが、実は自分が正しいと思う信心の押し付けだったのではと反省します。
 自分の欠点を自覚し、信心を前面に出して向かうのでなく、どこまでも相手の心に寄り添って接することが大切だと気付かされたのでした。
 その後知り合いの看護師に、病気の人との接し方について相談すると、グリーフケアのことを教えられ、近々講座が開かれるということでした。アコさんになんとか元気になってもらいたいと思っていた髙井さんは、早速勉強を始めます。
 しかし一年半が過ぎた頃、突然アコさんの危篤の知らせを受けます。すぐ病院に駆け付けたのですが、それがアコさんとの最後となってしまいました。

(髙井)本当にショックだったんですよね。彼女のお国替えというのも、すごくショックだったんですけど、それでもやっぱりずっと続けてきたグリーフケアの勉強も、これで止めてしまったら、どこか彼女の役に立てなかったという罪悪感みたいなものもあって、そのままずっと勉強は続けました。

(ナレ)アコさんが亡くなってしばらく経ったある日、友人とアコさんの自宅に行くことになりました。その前日、教会にお参りして先生にそのことを伝えると、先生はご神前にお供えしていた白ワインを下げられ、「持って行ってあげなさい」と言ってくれました。そのワインのラベルには、ワインとしては珍しく漢字で「喜び」という文字が印字されていました。

(髙井)私がたまたまお手洗いに行こうとしたら、キッチンでお母さんが泣いてたんですね。なんて声かけようと思ったんだけど、「今日ね、持ってきたワインね、昨日実は教会に行ってそのご神前見たらね、アコちゃんが好きな白ワインがお供えになっていて、『喜』って書いてあったから、なんか寿でもあり喜びでもあるっていうようなふうに私感じて、やっぱアコちゃんね、あっちで本当に助かっていると思う」って言ったんですね。「これ多分アコちゃんのメッセージじゃないかな」っていう話をお母様にしたら、お母さんがすっごい感動されて、お母さまが私の友達に、その話そのエピソードを「昨日、瑠美ちゃんが教会に行ってくれてね、ご神前にこれがあったんだって」その話をね、嬉しそうにされて「これみんなで飲もう」って言って、みんなでそのワインを飲んだんですよね。

(ナレ)嬉しそうに話すお母さんの姿を見て、髙井さんは、前に比べたらほんの少しでも寄り添えたんじゃないかと思えたそうです。
 その後、グリーフケア活動の拠点を設けることになりました。色々な候補地が挙がりましたが、その中から選ばれたのは偶然にもアコさんの地元、神奈川県の藤沢でした。その偶然に髙井さんは、アコさんが応援してくれていると感じました。
 藤沢では、今も毎月グループカウンセリングが開かれ、大切な人を亡くされた方々が、辛い胸の内を語られます。髙井さんは、最初は寄り添えるか不安だったそうです。

(髙井)実際にボランティアをしてみると、「人が人を思うその思いの深さ」にものすごく触れることができました。そういう涙ながらに「この先、生きていける自信がない」というようなことを、口にされる方もたくさんいらっしゃるんですけども、でも、こんなに苦しい思いをね、人は必ず死にますよね、なので、たくさんの方がこの経験をされてこられたんだというのを考えてみると、「私も、この経験を、いつか誰かの役に立てたい」っておっしゃる人が多いんですね。すごく。

(ナレ)髙井さんは、自身の「がん」を、神様からかけられた願いの「がん」と受け止めていくように先生に諭されました。そして、親友の病を経験し、グリーフケアを学ぶ中で、同じように苦しんでいる人の「お役に立ちたい」という思いが沸いてきました。その思いの中に、「人を助けたい」という神様の願いを見つけたのです。
 髙井さんは、これからもグリーフケアを通して、人が助かるお役に立ちたいと願っています。



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